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人生いろいろ、幸せの形もいろいろ!さまざまな家族の姿を描く映画ベスト10

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家族のあり方について考えさせられる
風変わりなロードムービー

Captain Fantastic「はじまりへの旅(2016)」

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

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カンヌ国際映画祭「ある視点」部門など 数々の映画祭で高評価を受ける

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

今回ご紹介する映画「はじまりへの旅」に登場する家族は、独自の子育てを実践する父親のベン(ヴィゴ・モーテンセン)と、彼のもとで育つ18歳から7歳までの6人の子どもたちです。
 
親が「子どものために」と思ってやったことでも、子どもからすると「ちょっと迷惑……」と感じてしまう。そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
 
風変わりな一家ですが、お互いを尊重する家族の姿に共感できる部分もあるはず。

また本作は第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の監督賞をはじめ、数々の映画賞を受賞しています。

 父と6人の子どもたちが
森の中で自給自足の生活

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

一家が暮らしているのは、文明社会から切り離された森の中。電気や水道、ガスは通っておらず、自分たちで狩りをして、自分たちの手で肉をさばく自給自足生活を送っています。
 
さらに、ベンは子どもたちを1人でも生きていける強い人間に育てるべく、急斜面の岸壁をロッククライミングさせるなど、アスリート並み、いやそれ以上にも思える厳しい訓練を受けさせています。
 
そのおかげで子どもたちは並外れた体力と身体能力を身につけていました。

 教育面でも独自の考えを持つ父
子どもたちは6カ国語を操る!?

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

教育においても、ベンのやり方は独特です。子どもたちは学校には通っていません。
 
それぞれに興味のある古典文学や哲学書、専門書を読ませ、その文献に対する論文を書かせることで、知識を得るだけでなく、自分の意見を自分の言葉で語れるように育てています。
 
その結果、長男のボウ(ジョージ・マッケイ)はアメリカの名門大学にいくつも合格するほどの頭脳を持ち、下の子どもたちも6カ国語を操れるスーパーキッズに育ちました。
 
しかし、8歳まで米オレゴン州の農場で暮らしていたボウ以外は、今以外の生活を知りません。なので、みんな父親の教育方針に疑問を抱くことはありませんでした。
 
しかし次男のレリアン(ニコラス・ハミルトン)だけは“父親のせいでママが病気になった”と思っていて、ベンに反抗的な態度を取ることがありました。

森を飛び出して初めての都会へ
一家で旅に出るが……

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

そんな彼らの生活に変化をもたらしたのは、長く精神を病み、家族と離れて暮らしていた母親が「自ら命を絶った」という連絡でした。
 
それを聞いたベンは、妻の葬儀に参列するために自家用バスに子どもたちを乗せ、2,400キロも離れたニューメキシコへ旅に出ます。
 
しかし、ベンは義父のジャック(フランク・ランジェラ)から「娘と子どもたちに不自由な暮らしをさせた」と恨まれており、「葬儀に来るなら、警察を呼ぶ」と言われていました。
 
それでもベンは子どもたちとニューメキシコを目指すのですが、この旅で初めて外の世界に触れた子どもたちはとまどいの連続でした。
 

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

それが顕著に現れるのが、途中で立ち寄った妹一家との食事のシーン。妹の息子たちは食卓についてからもゲームを手放さないような今どきの子どもで、当然、会話はかみ合いません。
 
なんでも包み隠さずに子どもたちに真実を伝えようとするジムに対し、妹は「自分が子どもたちに何をしているか、わかっているの?」と叱責しますが、ジムは「子どもたちの人生を救っている」と言って聞く耳を持ちません。
 
その後、彼らはなんとか葬儀に出席しますが、ジムはその場で「私が死んだら仏教徒として火葬されることを望みます」という妻の遺言状を読み出し、義父ジャックの指示で葬儀場の教会からつまみ出されてしまいます。
 
そのような状況下でも子どもたちはジムの味方をしますが、父親に反抗心を抱いていた次男のレリアンだけは違いました。書き置きを残して祖父の家に行ってしまったのです。
 
さらに長男のボウからは「(自分の知らぬ間に受けていた)大学に進学したい」という意思を伝えられ、ジムは大きなショックを受けます。
 
義父からも「子どもたちに対する虐待だ」と責められた彼はある決断を下すのですが、ジムの子育ては本当に間違いだったのでしょうか?

ひとつとして同じ家族・親子の形はないことを 改めて教えてくれる作品

©2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS, LLC ALL RIGHTS RESERVED.

たしかに親のエゴで子どもの生き方や人生を強要するのは問題だと思います。ですが、この一家がたどる道のりからは、そこに確かな愛と絆があったことが伝わってきます。
 
ベンと子どもたちが送る生活は一般社会から見たら特異に見えるかもしれません。でも、家族の形、親子の形は一つとして同じものはなく、愛情のかけ方もそれぞれです。
 
だからこそ、親からしたら「子どものため」でも、子どもからしたらどうなのか。また、逆の立場ならどう思うのか。そう考えさせられる映画になっています。
 
といはいえ、家族にとってのシビアな局面だけではなく、純情すぎる長男の初恋エピソードなど思わずクスッとしてしまうシーンもたくさんあります。なので、まずは深く考えすぎず、愛にあふれた家族のロードムービーとして楽しんでみてください。

(馬場英美)

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